CNCフライス保全

CNCフライスの設定や整備についてロボ班長に向けて突っ込んだ話も含めて

当記事の内容は保証致しかねます。自己責任でお願いします。

まずは部で使用しているCNCフライスの一覧

ORIGINAL MIND HAKU、KitMill RD420

 

Cut2Dの使用方法はオリジナルマインドに記載されています。

--------------------それぞれの特徴--------------------

1.      剛性

xy軸の剛性はRD420の方が上 そのためHAKUよりは切削条件を攻められる。

しかしz軸はRD420の方が低い。これはカップリングも荷重を受けている構造に

なっているため。実際に手で押して分かるレベル。

2.      主軸

HAKU163月現在RC用ブラシレスモーターに変更してあるため、回転数を制御しやすく、回転数が高過ぎると溶けてしまう樹脂系の切削に向いている。

RD420HAKUに比べてモータのトルクがあるため、ミルを深く入れる加工に向いている。

RD420主軸回転数はベルトの位置で変化させられる。

下から3400560010000rpm

HAKUは最大値12000rpm(モータの最大回転数は8000rpmプーリーの減速比は約1.5:1のため)からダイヤルで変化させられる。

3.      CNC

HAKUMACH3 RD420USBCNCを利用している。

UIが違うだけで操作内容は変わらない日本語化されている分USBCNCの方が使いやすい。回路は見たことが無いので割愛。

------------------切削条件の設定方法------------------

CAMソフトCut2Dに入力する項目は次の通り

     Pass Depth (切り込み z軸方向の一回あたりの送り量)

     Step over (ポケット加工時の重なり具合)

     Spindle Speed(主軸の回転数)

     Feed Rate(送り速度,切削速度) 

     Plung RateZ軸の送り速度)

 

ss-toolsで購入した超硬スクエアエンドミル2枚刃φ3(ZP-F2-03)のジュラルミンでの設定方法を紹介する。

エンドミル購入サイトに記載されている内容を元に条件を設定していく。無い場合は硬度や延性がほぼ同じ物を基準とする。ZPシリーズはφ3以下の条件やアルミについて記載されていないため、ASGシリーズの条件を上限に設定していく。

 

部で使用しているようなへっぽこフライスではサイトの記載通りに行かないので

サイト記載設定の4050%程度の設定にする。“適当に設定している“とはこの割合の事で何も考えていない訳ではない。例えフライスの性能が上がったとしても、クーラントがかけられず、熱や切りくず排出などの問題が起きるため、やはりサイト記載よりかなり低めに設定するべき。

     Pass Depth (切り込み z軸方向の一回あたりの送り量)

  切り込みが大きいほど早く終わるが、モータへの負荷は大きくなりトルクが必要。部のCNCフライスは主軸モータが貧弱なため低くめに設定する

サイト記載値:D×0.5=1.5mm

上記の10%程度 0.2mmとした。

     Step over (ポケット加工時の重なり具合)

大きいほど早く終わる。最大50%なので早く終わらせたい場合は自分で軌跡を書いてしまう手もある。かわロボ程度なら粗めに削って後で紙やすりで整えても良いが、フライスの平面出しをする際はこの値は小さめに。エンドミルの先の形状によって値は異なる。綺麗に仕上げるためには3540%が良い。

     Spindle Speed(主軸の回転数)

主軸の回転数をCNCから変更出来ないためCut2Dで設定しても意味は無い。ジュラルミンなどアルミ系を切るときは出来るだけ大きく、樹脂系を切削するときはその半分程度にする。

     Feed Rate(送り速度) 

回転数はカタログにある値を出せないためそのままの送り速度では使用できない。

被削材によって決まる定数は1刃送りであるため(刃数が増えれば切りくず排出の挙動が異なるため刃数によって少々変化することも)1刃送りを算出する。

算出方法は下記の通り。

上記の計算から566mm/minと算出されるがそれの4050%ほど230mm/minとした。

   Plung RateZ軸の送り速度) 

Z軸は貧弱なため、以下の表の通りに単位は[mm/min]

1.      切削条件の模索方法

初めての素材はメーカー推奨の20%程度の設定でテストカットを行う。

加工時CNC側から送り速度を変更でき、微調整にはちょうど良い。しかし折れないから良い設定ではない。ギリギリな設定だとちょっとした人的ミスで折れる確率が高まり、エンドミルの寿命が短すぎて加工中に折れては元も子もない。部では初心者が使うことも考慮しよう。(ミルは確かに安いかもしれないが場合によっては高い板材を一枚無駄にするだけでなく、進捗ダメですってことになるのでゆっくりめで

2.      浅く速く送るって何?

切り込みを浅く(0.05くらいこれより浅いとミルが上手く入らない)速めに送る方法。

主軸がヘタってきたらこの設定方針に切り替えると良い。ただエンドミルが切削している部分が短くなり寿命低下に繋がるため、基本深くゆっくり送る方針にしている。

3.      大会前に調子悪くなってきた何で??急いでいるのに

連続使用でモータがヘタっていると思われる。使用をやめる事は難しいだろう。結露しないような方法で冷やすなり、外気温なりを工夫する+切り込みを浅くして送り速度を早くすることで主軸の負荷を減らすのも良い。(慌てずにセットするのも大切ダヨ)

4.     樹脂系の設定ってどうすれば良い?

融点を超える切削条件で削ると溶けた樹脂がミルに張り付きミルが折れる。

そのため、回転数を抑え、切り込みを大きく、送り速度を遅くすると良い。

 

工具形状による切削温度の差は大きいので樹脂用ミルの購入もオススメ。

16年3月現在の切削条件(メンテ前なので遅めの設定になっています)

RD420 超硬スクエアエンドミル 2枚刃 φ2 (シャンクφ4) A2017 浅く早く

RD420 超硬スクエアエンドミル 2枚刃 φ3 (シャンクφ4) A2017

HAKU 超硬スクエアエンドミル 2枚刃 φ2 (シャンクφ4) A2017

HAKU 超硬スクエアエンドミル 2枚刃 φ3 (シャンクφ4) A2017

超硬スクエアエンドミル 2枚刃 φ2 (シャンクφ4) ポリカーボネート(8000RPM程度で使用すること)

超硬スクエアエンドミル 2枚刃 φ3 (シャンクφ4) ポリカーボネート(8000RPM程度で使用すること)

-------------CNCフライスの整備-------------

説明書を読み分解と組み立てを行えば良い。

 

説明書に書いていない追加整備方法は次の1点のみ。

 スライドレールやゲート取り付け時ダイヤルゲージを使用して、平行度を確保。

 

整備中にあった事故は以下の通り。(ここにある事故は説明書にある注意書きを守れば防げる)

スライドレールのブロックをレールから外してしまい玉を紛失。(12年と13年に発生)

台形ネジを曲げてしまう。(15年に発生)

 

部のCNCフライスの故障と修復の歴史

1.HAKUベアリング損傷 交換 (14年)1年に一回程度は交換すべき(ベアリングは規格品のためオリジナルマインドではなく外部サイトで購入してもよい 出来れば国産)

2.RD420のCNC装置のusb-bコネクタが負荷により破損 交換(15年)

3.HAKUの主軸モータが寿命を迎えたため交換(15年)3~4年に一回程度は交換すべき

4.台形ネジを曲げる 記事作成時修理中(15年)